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塾生諸君への手紙
2001年11月15日 上甲晃 | 個別ページ
秋もずいぶん深まってまいりました。お元気でお過ごしでしょうか。桜の花の下で新しい出発をしてから、すでに8ヶ月が経過しました。第5期生の研修も、いよいよ仕上げのときがきました。所定の研修も大半が終わりましたが、第5期生としての成否を決めるのは、実はこれからなのです。今月は、3月の「出発式」を中心にして、いくつかのお願い、そしてお知らせをします。
「出発式」は、3月の7日から10日まで、4日間にわたることを承知しておいてください。行事は3日間ですが、事前準備のために、さらにもう1日を割いていただかなければなりません。今から、3泊4日の出張ができるように段取りをしてください。いつも言いますように、会社を留守にする間の段取りをつけるのも、大事な研修の一つであります。上司の了解、周りの人の理解、家族の協力などをしっかりと根回しして、4日間の完全出席ができるようにしてください。なお、会社から派遣されている人たちにつきましては、私の方から、会社の責任者に、みなさんの完全参加への了解を取り付けるお願い状を出しておきます。
「出発式」の行事は、3日にわたります。初日は、「修了発表会」です。全員に、「志の人」についての発表をしていただきます。一人の持ち時間は、5分程度の短いものになりますが、すべての人に発表していただくところに意義を置いています。なお、延々と発表だけを続けていますと聞く方も大変ですから、気分転換もかねて、合間合間に、各クラスの出し物をしていただきます。その準備も、今から進めてください。
なお、「志の人」につきましては、400字詰め原稿用紙に10枚の文章を書いていただき、それを修了文集として、「出発式」までに完成させていただきます。自分の周りで、自分自身がその生き方や志に共鳴・共感する人を選び、取材をした上で、文章にまとめていただきます。締切日などの詳細は、担当の塾生から案内があります。締め切り厳守で、「志の人」の取材と文章作成の心積もりをしてください。
2日目は、大討論会です。テーマは、「日本どうする」。今回のテーマは、「食」です。現在、『青年塾』の食糧問題研究会が、企画の内容を検討しています。詳細の案内は、改めて行います。また、第5期生クラス対抗のディベイト大会も行います。練習、おさおさ怠りのないようにしてください。今年は、少数のハンディを跳ね返して、北海道クラスが大健闘したことが印象的でした。なお、この大討論会には、志ネットワークの会員諸氏も参加します。熱い討論の一日は、毎年、数々のドラマを生んできました。この日の夜は、志ネットワークの会員諸氏も参加した、大交流会。各クラスの出し物をここでも考えていただくことになります。お国自慢もあり、いつも、抱腹絶倒の連続です。
3日目は、厳粛な「出発式」です。会場も、3日間滞在した箱根から、富士市への移動になります。途中、富士山を見てほしいというのが、場所をわざわざ変える目的です。乙女峠を下るバスの窓から見る富士山の大きさは、一生の思い出となるでしょう。また、「出発式」の会場となるイエローハット富士営業所からも、富士山が目の前に見えます。「富士が目の前に見える場所で出発式を行いたい」というのが、私の切なる思いです。
なお、「出発式」の前に、「志ネットワーク全国会議」を行います。皆様には、その会議にも参加していただきます。その間、先輩諸氏は、諸君のために、会場の準備をしてくれています。これは、『青年塾』の伝統です。その次の年は、諸君が後輩のために、下働きをして、「出発式」の準備をしてあげる番になります。
「出発式」では、全員に、修了の盾を送ります。山中塗りのオリジナルです。そして、諸君には、全員に、決意を表明していただきます。一人の持ち時間、30秒程度です。志ネットワークの会員諸氏や、来賓の方々が熱い目を諸君に注いでくれます。熱い思いのひと時をもてること、いつも祈る思いであります。すべてが終わるのは、午後2時ごろ。
以上が、「出発式」の大体の内容です。運営については、第1日目が、第5期生。第2日目が、『青年塾』食料問題題研究会チーム。第3日目は、『青年塾』の先輩有志。諸君には、初日を中心として、運営を担当していただきます。とりわけ、東クラスが、当番になります。大きな負担が、東クラスの諸君におおいかぶさります。ぜひとも、他のクラスの諸君の支援をお願いします。
これから諸君にお願いしたいことを確認の意味で箇条書きにします。
①修了文章「志の人」の執筆。400字詰め原稿用紙で10枚。
②「修了発表会」塾生発表の準備。一人5分程度。
③「修了発表会」の幕間の、クラスの出し物を決め、準備する。
④ディベイトの練習
⑤第2日目の夜の「夕食交流会」でのお国自慢の出し物を決め、準備する。
⑥出発式での決意表明の準備。一人30秒程度。
⑦「修了発表会」準備のために、前日、会場設営をする。
今後、各クラスで、上記の準備のために、最低一回は、「自主研修会」を開催してください。1泊2日でかまいません。『すべてに完璧を期す』、『お茶を濁さない』は、『青年塾』の合言葉です。これから、最終の研修が各クラスごとに行われます。ぜひ、「自主研修会」の開催を決めてください。これからが本番のつもりで。
当たり前ができる強さ
2001年11月13日 上甲晃 | 個別ページ
世間が不景気にあえいでいるのを尻目に、半期の決算で、過去最高の利益をあげたというのだから、トヨタ自動車は大した会社である。昔は、松下電器にも、"不況に強い会社"という定評があっただけに、いまだにトヨタ自動車が"不況に強い会社"であることが、いっそうまぶしく見える。松下電器は、その意味で、普通の会社に成り下がってしまったのがさびしい気がする。
トヨタ自動車の9月中間決算によると、経常利益が5266億円。前期比で、34%増。生き馬の目を抜く自動車業界において、圧倒的な強さを誇っている。年間の利益が1兆円を超える見通しだと、新聞記事は伝えている。驚異の経営力である。
私は、日本経済新聞の記事を読んでいて、膝を打った言葉を見つけた。私が日ごろ言い続けているのと同じ言葉が、強い経営力の要因として上げられていた。「当たり前のことを当たり前に、しかも組織だって実行できる強さ」。これが、私のメモに記した言葉である。
私は日ごろから、「当たり前のことを当たり前に、しかも例外なく、すべての人が実行できる会社はすごい会社である」と主張して、当たり前のことを当たり前に実行することを説き続けている。自分なりにそれは一つの信念ではあったが、トヨタ自動車が実際の経営をもって証明してくれると、ますます自信を深めてしまう。
かつてこのデイリーメッセージでも記したことがあるが、松下電器が低迷している最大の理由は、「お得意先を足しげく訪問し、お互いの絆を深めるという当たり前のこと」ができなくなってしまっているのだ。難しいことができないから経営が低迷するのではない。誰でもがその大切さを知っているはずの当たり前のことが、おろそかになり始めたときから、経営力は低下し始めるのだ。
私は、最近、トヨタ自動車の関係会社とのお付き合いが多い。感心するのは、それらの会社の人たちが、トヨタ自動車の厳しい要求に対して、不平不満を持つのではなく、「トヨタ自動車に付いていけば、自分たちも生き残れる」と信じ込んで、厳しい要求にこたえようと努力していることである。下請けを切り捨てることを合理化と考えるか、下請けととともに生き残ろうと厳しい努力をするのが本当の合理化か、その点でも、トヨタ自動車は一つの示唆を与えてくれているように思う。
地域の教育力
2001年11月 5日 上甲晃 | 個別ページ
「この地区には、孤独死、登校拒否、いじめなどの問題は、まずありません」と断定した清和さんは、さらに言い変えた。「いや、まったくありません」ときっぱり言い切ったのである。最近、これほど明確に自信のある言い方で、「一切の問題がない」と断定するはいないと思うほどだ。私は思わずうれしくなてしまった。
清和さんは、山形県櫛引町黒川地区に500年前から伝わる黒川能の能役者である。普段は、サラリーマンである。私の主宰する『青年塾』庄内講座で、三人の仲間とともに黒川能のさわりの仕舞いを演じてくれた。四人の能役者たちは、仕舞いの後、舞台を降りて、塾生をはじめとする参加者と膝を突き合わせて話をしてくれた。
私が、黒川能をはじめて鑑賞したのは、三年前である。そのとき、黒川能にすっかり魅せられてしまった。500年近く、地元の氏神さんである春日神社に、氏子たちが能を奉納するしきたりは、休むことなく続けられてきた。今は、国の重要無形文化財に指定されている。
私は、農民がそろって、農閑期に能を練習することも、それを神様に奉納することも、数百年間欠かすことなく続けてきたことも、すべてが高貴な営みと思えた。そして何よりも感心したのは、春日神社の氏子たちが、地域ぐるみで黒川能を継続してきた知恵である。まず、参加するのは、村の最長老の男性から、5歳の子供にいたるまで、総がかりである。とりわけ、氏子の家に神様を迎える王祇祭は、集落の一番長老の男性の家に能舞台を設けて行う。大地踏みの大役は、5歳の子供が担う。その大役を果たすために、家族はもとより、集落挙げて、力を合わせる。能は、集落の氏子たちの家庭を上座、下座の二つのグループに分けて、競い合う。これまた、なかなかの英知である。
老若男女、集落のすべての人たちが役割を持ち、一つの目的に向かって、力をあわせていく姿を知るにつけ、私は、一つの確信を持った。この地域には、登校拒否やいじめなどの陰湿な問題は発生しないのではないかと。そこで、能役者の一人である清和さんに、確認の質問をしてみたのである。「地域の連帯が断ち切れてしまって、地域の教育力が失われたと言われていますが、この地域のような強い絆と連帯感があると、陰湿な問題は発生しないのではないでしょうか?」と。答えは冒頭の清和さんの確信に満ちた発言である。地域の連帯があれば、教育問題の多くは解決するのだと教えられた。

