志ネットワーク 青年塾:「志の高い日本」は、「志の高い日本人」によってこそ実現するとの思いに立ち、志ネットワーク活動を展開。 主宰:上甲晃

金融大臣

2004年11月11日 上甲晃 |

 絶妙のタイミングというものがあるようだ。神妙な顔で特別調査官と向かい合う瞬間を狙ったかのように、今回の内閣改造で金融大臣に就任した伊藤達也氏から、電話が入った。私が出した手紙に対する御礼の電話である。特別調査官も、いきなり大臣から入った電話に驚いた様子。「『青年塾』の塾生さんですか」と聞く。「否、松下政経塾時代の塾生です」と答えた。

 伊藤達也氏には、大臣就任に際して、私は手紙を書いた。それは激励分である。既に、内容はデイリーメッセージで前回紹介したものだ。「本物の政治家を目指せ」、「歴史の評価に耐える仕事をしろ」、そんな激励をした。お祝いの品々はいろいろ届けられることだろうから、私は、メッセージを贈り物にした次第である。伊藤氏は、大いに喜んでくれ、「ありがたい激励」と受け止めてくれたようだ。

 「先日は、塾出身の衆議院議員が十数人集まり、お祝いをしてくれました」と伊藤氏が言う。私は、「僕は、あなたが大臣の間は近づかない。その代わり、大臣を退任して時、ご苦労さんと慰労する会を持つことを約束する。だから、それまでは天下のために、大いに働いてくれ」と伝えた。約束は忘れないようにしなければならない。

 伊藤達也氏は、まじめで、手堅い男である。大向こうをうならせるような派手さはないし、いかにも大人風の風を吹かせることもない。堅実、そして実直な性格である。そのぶん、仕事振りは手堅いし、信頼できる。彼が在塾中から、奥さんに宅配のピザ屋を経営させていたのも、その現れであろう。「選挙が就職活動になってはいけない。仮に選挙に落ちた時でも食べていけるように」との思いから始めたものだが、松下政経塾の塾生の中では、珍しく堅実で、現実的な発想ができる人とも言える。

 それにしても、三十七歳で横浜市長になった中田 宏氏、そして四十三歳で大臣になった伊藤達也氏など、時代は若い人たちを強く求めているようである。そして、安定している時ならとても出番のない若い人が表舞台に立った時、はつらつとした改革を進めていけることもうれしいことではないか。それに対して、高度経済成長時代にスポットライトを浴びていたヒーローたちが次々に舞台から転げ落ちていくのも、象徴的な出来事ではないだろうか。

 堤義明、ダイエー、なべつね、三菱自動車、橋本竜太郎、落ちていく偶像の多さは、新しい時代を待望する潮流の表れでもあるのだ。時代は大きく変わろうとしている。青年よ、勇気をもって立ち上がれ。

万策尽きて、志

2004年11月 2日 上甲晃 |

 最近、私が好んで使う言葉、『万策尽きて、志』。これは誰かの言葉を借用したものではない。私が考えた自前の言葉である。

 その意味は何か。厳しい経営環境が取り巻く今日、多くの経営者は、考えられるありとあらゆる方法を講じてきた。対症療法である。あれがいいと言われれば飛びつき、これがいいと言われれば一も二もなく取り入れてきた。考えてみれば、この十年間、経営改善になると思えば、ありとあらゆる方策を講じてきた期間でもあったのだ。

それはまるで、健康法のようでもあった。これが身体に聞くといわれれば高いお金を出して買い求め、これが健康に効果的だと教えられれば急いで取り入れてきたのである。そして思い返してみると、健康に良いといわれるあらゆる方策を講じたにもかかわらず、結局、どれも思ったほどの効果が上がらなかった挫折感が広がっていくようなものである。

どの方法も、さしたる効果が上がらなかった。また、前宣伝されたほどの効果が上がらなかった。いわば、『万策尽きた』のである。万策が尽きた時、みんなは考え始めた。もはや小手先の対症療法ではどうにもならないのではないかと。ここはやはり、根本に立ち返り、『経営とは何か』、『人は何のために働くのか』、『会社は何のために存在するのか』、『私は何のために働いているのか』。すべての原点に立ち返って、反省し、改めるべきところは改め、止めるべきは止め、新しい出発をしなければならないことに、多くの日本の経営者は気がつき始めたのである。

 まさに、『志』を立て直すべき時がきたのである。企業としての新しい志、新しい理想、新しい価値観、新しい目標を立て直すこと。そこまで立ち戻らなければ、事態を打開できない時がきたのだ。手前味噌に言うならば、「今こそ、志の時代」の到来である。

 最近、私のところへくる講演依頼のテーマについて、「志について何か話をして欲しい」と注文をつけられるケースが多い。今までは、「松下幸之助について何か話して欲しい」との注文が多かっただけに、世の中の風の向きが変わりつつあることを、皮膚感覚で感じてしまう。特に今年の講演依頼は、銀行関係が多い。その銀行も、大手都市銀行である。某大手都市銀行からは、全国の支店長並びにそれに準じる幹部に、「志の話をして欲しい」と依頼されている。それも一行、二行ではない。少し大げさに言えば、゛軒並み゛依頼の注文がきている。不況の真っ只中にあった銀行もまた、不良債権の処理から、「志」へと前向きに転じ始めたのである。すべて、『迷えば、元に戻ること』だ。


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