志ネットワーク 青年塾:「志の高い日本」は、「志の高い日本人」によってこそ実現するとの思いに立ち、志ネットワーク活動を展開。 主宰:上甲晃

森は海の恋人

2006年8月 1日 上甲晃

 館ヶ森のアーク牧場から、三陸海岸の気仙沼に向かう途中、地元産品の直売所に立ち寄ったのは、トイレ休憩のためであった。直売所の看板には、室根村とある。かなたに、室根山が見える。この室根山が、これから訪ねる畠山重篤さんが、十七年間、木を植え続けてきた山である。
 畠山重篤さんは、私達一行を、船着場で待っていてくれた。畠山さんは、「会議室のようなところで話をするよりは、船の上で説明をしましょう」と、申し出てくれた。おかげで、気仙沼湾の美しい景色を舟から眺めるというすばらしい機会を与えられた。大きく入り込んだ内海、そして海に突き出た唐桑半島。長雨にたたられていささかうんざりしていた私達一行を歓迎するかのように、空はどんどん晴れ上がり、陸地の緑がますます映える。海の青さと木々の緑が、印象的である。
 畠山さんが、マイクを握る。「気仙沼と言うのは、アイヌ語で、ケセモイといいます。ケセは゛終わり゛、モイは゛入り江゛の意味です。つまり、アイヌの人達から見れば、端の港なのでしょう。この気仙沼は、カツオの水揚げでは日本一です」と言いながら、港に並ぶカツオ船を指差す。「あれが三重県から、あれが鹿児島県から、あれが和歌山県から」と次から次に現れる船が、どこから来たかを教えてくれる。畠山さんの説明を聞くうちに、カツオ船が全国のあらゆるところから気仙沼に集まっていることが、よくわかる。「なぜ、この気仙沼でカツオ漁が盛んなのか?」、畠山さんの話は、船のスピードに合わせるかのように、確信に入っていく。
 「カツオのエサは、生きたカタクチイワシです。カツオは冷凍のイワシでは食いつかない。生きたイワシの群れに飛びつく。そのために、生きたイワシが手に入りやすい気仙沼が、カツオ漁の基地になったわけです。それでは、なぜ、カタクチイワシが、気仙沼で手に入りやすいか。カタクチイワシは、川が海に流れ込む汽水域に生息します。気仙沼湾には、大川から豊かなプランクトンが流れてくる。そのために、カタクチイワシが、大量に取れるのです」。畠山さんの話は、早くも核心に迫る。
 牡蠣の養殖は、汽水域で行う。「何もエサはやりません。ただ海水の中に吊るしておくだけで、牡蠣が育つ。かつて漁師達は、海からエサが来ると思っていました。ところが違った。エサは、川の流れに乗ってくる。それは水源地にある落葉樹が豊かであればあるほど、豊富になる。カタクチイワシが集まるのも、牡蠣が立派に育つのも、すべて、プランクトンが川の流れに乗って海に入り込むからです。だから森に木を植えなければならなかったのです」。゛海は森の恋人゛の理由が解き明かされた。


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