志ネットワーク 青年塾:「志の高い日本」は、「志の高い日本人」によってこそ実現するとの思いに立ち、志ネットワーク活動を展開。 主宰:上甲晃

グリーン・ツーリズム

2009年1月20日 上甲晃 |

かぼちゃの出荷体験 夕張郡長沼町は、札幌・新千歳空港から、車なら30分ほどの距離にある。広大な平原に、豊かな農業地帯が広がっている。農家の数は、およそ800戸。稲作、畑作、果樹、酪農など、農業なら、何でもござれ。とりわけ、大豆の生産では、北海道一を誇る。その長沼町の農家には、もう一つ゛北海道一゛を誇るものがある。全国各地から来る小学生、中学生、高校生を自宅に泊めて農業体験させるグリーン・ツーリズムにおいても、北海道では飛び抜けた実績を誇っているのである。


大豆畑の草取り体験 同町が平成16年にグリーン・ツーリズムに取り組み始めてから、実績は急激に増えている。初年度は、188人であった。翌年度は、早くも1,000人の大台に乗り、さらに次の年にはほぼ2,000人、さらに3,000人台と、急速な勢いで伸びてきた。あまりの急速な伸びに、農家からは、「ちょっと一服」といった声が出たこともある。それでも勢いは止まらず、ついに20年度は5,000人の大台を突破した。地域も、首都圏、関西圏から、最近は九州にまで広がりつつある。


田植え体験 北海道の中には、子供達を受け入れて泊めることを営業として行うことを認可されている農家は、223軒あるが、そのうちの159軒、およそ7割は長沼町の農家。まことに、熱心である。
 ここまでグリーン・ツーリズムが盛んになった理由の一つは、行政と農業協同組合が、一体になったことだ。゛小異を越えて大同団結゛することは、物事が成功する秘訣だ。もう一つの理由は、長沼町が有名な観光地でなかったことである。名の通った観光地では、ホテルや旅館が、自分達の領域を侵されると、グリーン・ツーリズムに対しては反対が強い。同町は、有名観光地でなかったことが幸いして、抵抗がなかった。


トマトの整枝体験 農家の人達も、この計画にはおおいに乗り気だ。次代を担う子供達に農業を教えること自体、やりがいがあり、楽しいと受け止めている。おかげで、「子供達に励まされて、これからも農業を元気に続けていこうと思える勇気をもらった」と燃えている農家が増えている。
 子供達の反応もいい。「土に触ったことがない都会の子供達にとっては、すべてが新鮮な経験になっています。修学旅行の感想文が送られてきますが、観光地に行ったことよりも、農業体験のことをみんながくわしく書いています」と、町長も意気盛んだ。東京の はさ掛け体験ある有名進学校から来た生徒は、スギナの根を辿って、 2メートルもの長さがあることに驚いた。そして、何より回りが驚いたのは、2時間、高校生が夢中に土を掘っている姿である。子供達も、何か大事なものをつかんでいるのだ。

宝貴的資源

2009年1月 5日 上甲晃 |

シンガポール1 マレー半島の先端に位置するシンガポールは、隣国マレーシアと、水道を挟んでつながっている。国境には、両国を結ぶ三本のパイプがある。三本のパイプは、シンガポールに住む四百五十万人にとっては、生命線である。パイプが破壊されれば、シンガポールは、たちまち干上がる。
 三本のパイプのうち、二本は、マレーシアから生水を輸入するものである。生水は、そのままでは飲料水としては使えない。そこで、技術的にも資金的にも優位にあるシンガポールが、生水を浄化して、残りの一本のパイプを使って、逆に、マレーシアに輸出している。
 国の面積が淡路島と同じ面積のシンガポールには、高い山はない。一番高い山でも、海抜百四十メートル。新しく完成したシンガポール第一の高さを誇るビルは、その倍、二百八十メートルある。高い山がなく、国土が狭いことは、水不足をもたらす。人間、油がなくても生きていけるが、水がなければ生きていけない。自国で国民が使用する水を自給できないことは、シンガポールにとって最大のアキレス腱でもあるのだ。
 一九六五年、シンガポールがマレーシアから独立する際、水を売ってもらう契約を結んだ。三本のパイプが建設されたのも、その後だ。契約は、二〇一一年と二〇六一年に更新の時期を迎える。仮に、将来、両国の関係がこじれたら、価格を今よりはるかに高く売りつけられるかもしれない。あるいは、売ってもらえないことさえ、あり得ない話ではない。シンガポールは、今、水を自前で確保することに躍起となっている。
私は、正月早々にシンガポールを訪問、「水を自給するプロジェクト」を見学して回った。水を自給するプロジェクトは、大きく三つある。まず、下水を上水化すること、海水を淡水化すること、そして溜池方式だ。
ニューウォーター最初に見学したのは、下水の上水化の拠点だ。国内四ヶ所の拠点で、下水を回収して、最新鋭の工場で、高精度の処理をし、完全なる上水、名付けて、゛ニューウォーター(新生水)゛を生産している。現在、九十八パーセントが、工業用水として再利用され、飲料用は二パーセントだ。将来はこれを拡大して、水利用全体の三十パーセントにまでしたいと、担当者は意気込んでいた。下水と聞くと、心理的に抵抗があるものの、データー的には完璧な蒸留水だ。政府は、国民が進んで゛新生水゛を飲むことを奨励している。若い人達は、既に、慣れつつある。
シンガポールは、水を「宝貴的資源」と呼ぶ。日本には、シンガポールの人から見たら、喉から手が出るほど欲しい水が、あり余るほどある。あり過ぎて、ありがたみが分からないことが、いささか残念である。

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