ユヌスさんとの再会

上甲 晃/ 2002年5月1日/ デイリーメッセージ/

貧困の中にあえいでいる国を見ていると、何もせずに放って置けないという気持ちが高じる一方で、どこから、何に手をつけたらよいのかわからない絶望感に襲われる。私は、今まで、バングラデシュに来るたびに、その絶望感に陥っていた。とりわけ、貧困のもたらす混沌の極致とも言うべき、人口一千万の首都ダッカに滞在していると、絶望感はよりいっそう深くなっていた。

しかし、昨年、初めてグラミン銀行の創設者であり、現在の総裁であるユヌスさんと会ってから、私の絶望感は大きく和らいだ。ユヌスさんは、私を絶望感から救い出してくれた。貧困から抜け出る具体的で極めて実際的な手法を編み出し、それを全土に普及させつつあるユヌスさんの試みは、世界で一番貧しい国にとっても、そして私にとっても、大きな希望なのである。そのユヌスさんに、今回のバングラデシュ訪問に際しても、お会いすることができた。会見時間の約束は、およそ三十分。しかし、ユヌスさんは、私たち一行の質問の一つ一つに実に丁寧に答えてくれて、とうとう一時間にも及んだ。

世界最大の援助国であるバンクラデシュは、年間に、およそ二千億円強の援助を外国に負っている。それでも、とても貧困からは抜け出られるものではない。「だからもっと援助を増やして欲しいと願う気持ちを、私はまことに恥ずかしいことであると思う」とユヌスさんは語る。私は、その姿勢からして、ユヌスさんの考え方にほれ込んでしまう。「自分が貧しい状態から抜け出るために、もっと援助してほしいと求めるのは、物貰いの根性である」と、ユヌスさんは言い切る。その一点を取ってみても、ユヌスさんの考え方が、いかに救世的かがわかる。

ユヌスさんは、貧しい人たちに小額の事業資金を貸与するマイクロクレジットの生みの親である。とりわけ、担保を持たない貧しい女性に資金を提供してきた。「今までの銀行は、貧乏人は借用できない。貧乏人に金を貸すと、すぐに食べてしまって、お腹の奥底にしまいこんでしまうと言ってきた。私は、貧乏人は借用できると確信している」とユヌスさんは、確信をもって言う。さらに、「貧しい人たちに、貧乏から抜け出る道を邪魔する条件を一つ一つ取り除いてあげれば、彼らは必ずまじめに努力する」とも言う。それは、すでに二百五十万人を越える貧しい人たちへの資金の堤供と、九十九パーセントの回収率という実績が、ユヌスさんの言葉の正しいことを証明している。借用できるはずの金持ちに踏み倒されている日本の銀行は、何と抗弁するのか。