同志との再会

上甲 晃/ 2002年5月2日/ デイリーメッセージ/

「正直、私も少し疲れました」。ダッカの市内にあるダッカ山形友好病院の院長であるラーマン先生は、私たちが待つ院長室に入ってきて、自分の椅子に座るなり、そんなせりふを口にした。いっもは熱く理想を語るラーマン先生にしては、珍しい弱音である。

疲れた理由を話してくれた。「バングラデシュの病院は、医療器械を、世界の人たちから寄付してもらいます。だから、いろいろな機械は揃いました。しかし、それを使いこなす考え方ができていないから、どんなに機械や設備が整っても、何も変わりません。また、一つのシステムが確立していないから、みんな考え方がばらばらで、いつまで経っても何も変わりません」。バングラデシュの病院を、近代的仕組みに変えようと努力しているラーマン先生も、日本で学んできたことと、自国の現実との余りにも大きなギャップにいささかお手上げなのである。

外国に医学を学びに行く人は多い。それらの人が帰国してからの考え方には二つある。一つは、外国で学んだことを利用して、自分のお金儲けに走る人たち。そしてもう一つは、バングラデシュの人たちのために役立とうとする人たち。現実には、圧倒的に前者に属する医者が多い。バングラデシュのためにと奮闘するラーマン先生が疲れを感じるはずである。

私は、「医療が良いか悪いかは、診察の待ち時間が長いか短いか、医療費が高いか安いか、病院の建物が立派であるか貧しいか、ではないと思います。医療が良いか悪いかは、すべて、命が助かるかどうか、適切に治療されるかどうかではないでしょうか」と、素人なりの思いをラーマン先生にぶつけた。その一言に、ラーマン先生は、目を覚ましたかのように、「その通りです」と切り出し、日ごろの思いをとうとうと語り始めた。それこそ、いささかの疲れも吹き飛んだようだ。

「バングラデシュは、これだけたくさん外国から援助をもらいながら、良くならない。なぜか。この国を良くするには、人間が人間のために何ができるかを考え、人間は他の人間のために働いてこそハッピーになれるという、そういう考え方が広がらないと、この国はいつまで経っても良くならない。物をどれだけたくさんもらっても、それを使う人の心が育ってこないと国はますます悪くなります。物があっても、考え方がないと、物を本当に生かすことはできません。教育のない人が多いこの国ですが、教育ある人たちの心を育てることの方が、もっと大切とも言えます」。私は、ラーマン先生の手を握り、「同感」とうなずいた。