ハコモノ

上甲 晃/ 2002年7月8日/ デイリーメッセージ/

最近の選挙を見ていると、橋や道路を精力的に造ったり、様々な建物を建設して業績を上げてきたベテランの首長が選挙で落ちるケースが多いように思う。今まで一番選挙に強かったタイプが、このごろはなぜか選挙に勝てなくなってきたのである。長野県の田中康夫知事なども、その典型だ。ダムを造ることを公約に掲げれば選挙には強かったのは、今までの話。最近は、ダムを造らないことを公約するほうが、有権者の支持を得られるのである。変化の兆しである。

有権者は、立派な施設ができても、先々のことをお見通しなのである。お祭りの後、その維持をするのに、膨大な費用がかかる。この財政難の時代に、運営の維持管理費用が捻出できるはずがない。だから、一時的な華やかさに目を奪われてはならない。立派な施設は、赤字の元凶である。有権者は、そのことをわかってしまったのである。だから、中央と直結してハコモノを造る腕力を誇るベテランの首長が、選挙に勝てなくなってきたのである。

その変化の兆しの舞台裏をみごとに解説してくれた人がいる。山口県柳井市の河内山市長。「日本では、建物を立てるための財源はたくさんあります。補助金もその中に含まれます。それに対して、維持管理する裏づけになる財源はありません。だから、建物を建てやすく、維持管理しにくいのが、当然なのです。例えば文化ホールを建てるための財源は山ほどあります。その財源を使い、最高のレベルの施設を造ることはできます。そして、海外から世界的なレベルの演奏家や楽団を招いて、柿(こけら)落としをします。しかし、華々しくスタートした音楽ホールが、維持管理する裏づけの財源がないために、年を追うごとに、赤字体質になってしまいます。気がついたら、地域のカラオケ大会に、音楽ホールが利用されている、それが実態です。もちろん、カラオケ大会に最高級の音楽ホールを使ってはいけないとは言わないけれども、裏返せば、台所が火の車になっている証拠です」。

ハコモノを造れば造るほど、維持管理に苦労して、財政がますます逼迫することを私たちは承知してしまった。全国各地に、雨後の筍のごとく、サッカー場が建設された。河内山市長は、「やがて十年もすれば、地域のゲートボール大会の会場になっていることでしょう」と予想する。既に、すべてのサッカー場が、見通しのない赤字の泥沼にはまってしまう恐怖にある。あの華やかなワールドカップは、いったい地域にとって何だったのだろうと、うつろにつぶやく日は近いようだ。