青年の目つき

上甲 晃/ 2003年1月10日/ デイリーメッセージ/

「最初は本当に緊張していました。おそるおそる、こわごわ。すべてが不安でした。カバンの中の半分ぐらいには食糧を入れてきたほどです。しかし、こうして旅が終わってみると、本当に印象的で、感動的でした。私自身の中で、何かが変化していきそうな気がします」。バングラデシュを飛び立ち、バンコクで六時間近い待ち時間を過ごすうちに、参加した人たちは、誰言うともなく、口々に感想をもらした。そしてその感想が、お互いの気持ちを確認し合い、いっそう旅の満足感を高めた。

「これから『青年塾』では、バングラデシュスタディーツアーを必須にできませんかね。不便・不自由・不親切をモットーにしている『青年塾』の極致の研修です。もっともっと多くの人たちに参加して欲しいと思います」と、『青年塾』から参加した人たちは何度も繰り返し、口にした。

バングラデシュの旅は、不便で不自由な暮らしである。特に最後に泊まるダッカのホテルを除けば、旅先の暮らしは、日本ではとても考えられない生活である。「電気とガスと水道がない暮らしなど、耐えられないと思っていました」と正直な感想を述べた人がいたが、「実際に入り込んでみると、自分の生活力の弱さを感じて、恥ずかしくなりました」と、自らの中の変化を確認するようになった。

私たち日本人が、当たり前と思っている生活が、実はまことに贅沢なものであることに気がつくことは、まず大きな変化の第一歩である。至れり尽せり、欲望がすべて充足できるようにつくられている私たちの普段の暮らしは、ありがたいけれども、私たちの生きる力、生活する力を随分そいでいるのだ。便利な生活に慣れれば慣れるほど、生活力は弱まる。ひ弱な日本人は、物質的豊かさの裏返しだ。バングラデシュには、まだまだ物がない。すべて自分たちで工夫し、知恵を働かせ、額に汗をして体を動かさざるを得ない。その姿が、ひ弱になった日本人の目には、実にたくましく見えるのだ。筋骨隆々の男が、一仕事を終えて、水浴びしている姿さえ、まぶしいほどたくましい。

それにしても一番驚いたのは、ダッカ大学の学生たちの真剣な姿勢。たまたま授業中の教室に入った。全員、即座に立ち上がり、私を出迎えてくれた。私が、「どうぞ座ってください」と声をかけ、授業は再開された。先生が黒板に文字を書き始めると、生徒たちはきちんとした姿勢で食い入るように黒板を見て、ノートに書き写す。迫力さえ感じられる真剣さだ。青年の目つきは、その国の将来を象徴している。バングラデシュはこれから良くなる。それに比べて、日本の大学生たちはどうか。