四十七年連続増収増益

上甲 晃/ 2004年9月11日/ デイリーメッセージ/

寒天の専門メーカーである伊那食品工業は、四十七年間、売上、利益を伸ばし続けてきた。四十七年連続して増収増益という実績は、きわめてまれである。少なくとも、私の知る範囲に、そんな会社はない。

『青年塾』東海クラスの研修を、長野県伊那市に本社のある伊那食品工業さんで開催させてもらった。二泊三日の研修の最初は、同社の塚越 寛社長の話を聞くこと。連続増収増益を可能にしてきたのは、塚越社長の経営手腕によるだけに、話はまことに興味深い。そして、私は、塚越社長の話を聞くたびに、「志」の大切さを確信する次第である。

「急成長させないこと」。塚越社長は、連続して売上と利益を伸ばしてきた秘訣を教えてくれる。「物事の一番良い姿は、末広がり。すなわち、時間と共に良くなることです。社員にしても、将来に渡って毎年給料が上がっていく状態にあると、安心して人生設計できます。浮き沈みのある姿は、非常に困るのです。私はいつも、無理して成長させなくてもいい、大事なことは、前の年よりも少しでも良くすることだ」。急成長させないと聞くと、恣意的、あるいは経営の手法のように聞こえる。しかし、それは間違いだ。急成長させずに、一歩一歩成長させるためには、あらゆる活動を最大限に取り組まなければできることではない。

「世の経営者の多くは、゛追い風゛と急成長を混同している人が多いようです。゛追い風゛は、実力ではありません。それを自らの努力や実力と誤解して、過大な投資をしたり、人を大幅に増やしたりして、結局は行き詰まってしまうケースが非常に多いようです」。塚越社長は、自らの力を冷静に認識すれば、急成長などありえないと確信しているのだ。

塚越社長は、いつも、社員が持てる力を最大限に出してもらうためにはどうすればいいかを考えてきた。そのことが、四十七年間、連続増収増益の経営の実現を可能にしたのである。仮にも、経営者が、自らの金儲けのことばかり考えていたとしたら、とても今日の姿はない。

社員がのびのび、はつらつとして、気持ちよく倍の働きをしてもらうためにはどうしたらよいのか。脅かしたら、倍働くか。ノルマを課して、徹底して締め上げたら、倍働くか。給料を倍にしたら、倍働くか。塚越社長は、様々に頭を巡らせた。「寝ても覚めてもそのことを考えていました」と言う。そして塚越社長が得た結論は、「この会社は、自分の会社であり、自分の職場であると思うことができたら、きっと社員は生き生き働いてくれるに違いない」。その結論は、塚越社長の経営の原点であり、伊那食品工業の経営の志である。