罰が当たる

上甲 晃/ 2005年8月26日/ デイリーメッセージ/

工場の入り口に立つと、醤油の匂いが辺りを包む。何人かの作業者が、梱包された食品の包装を手際よく解いている。入り口の正面には、こげ茶色をした醤油の粕が山のように積み上げられている。暑さが作業を厳しく見せる。工場は、奥に向かって広がっている。白い袋に入った完成品の豚に食べさせる飼料がずらりと並んでいる。
私は工場の説明を聞くうちに、唖然とした。「毎朝、何トンもの卵が入ってきます。それはそのまま食べられる調理したてのものです。廃棄される理由はただ一つ。ゆでた卵を半分に切った時、卵の黄身がどちらかに偏っているために、スーパーの店頭で売れないから。それだけではありません。売り物にならないからという理由だけで、どれほど大量の食品が捨てられることでしょう。私達は、それを仕入れて、豚の餌として生産しています」。卵のほかにも、色々ある。工場に足を踏み入れると、袋に入った新しい麺がうず高く積まれている。計量の結果、基準としている数値から少しずれているだけの理由で廃棄されたもの。あるいは、間もなく賞味期限が来るので引き上げられた菓子なども、その日の朝に焼きたてのナムの生地、ホテルから出た食べ残し、焼きたてのパンなどもある。スーパーでは、欠品しないように、豆腐名となどは常に多い目に商品を供給する。裏返すと、いつも売れ残りが大量に出ることが宿命付けられているのだ。
この会社を設立した根来みどりさんは、「ここに集まってくる食品の残渣(ざんさ)を見ていると、罰が当たると言うか、神を恐れない人間の営みとも言える」と話す。それほど、廃棄される食料が大量なのである。根来さんは、それを豚のための質の高い飼料として生産することを目的とする会社を立ち上げた。「循環型の農業をめざす」という高い志がある。食料の廃棄物を材料として、飼料を生産しているが、自らもフィリピンに農場を持つほか、那須にも農地を確保して、本格的に豚の飼育をはじめとする循環型の農業に取り組む予定にしている。
『青年塾』サマーセミナーは、六つのチームに分かれて、資源再生に取り組む事業所を見学するところから始まった。私達夫婦は、千葉県市川市にある株式会社農業技術マーケティングを訪問した。経営者の根来さんは、この分野の素人である。スタッフもすべて素人ばかり。ただ、環境問題に強い関心のあることだけは、共通していた。素人が、「何とかしたい」と執拗に取り組んできた。熱意が、常に道を開いてきた。今やこの会社で生産する飼料は、養豚の業界でも最高レベルの良質だ。