『青年塾』塾生諸君への手紙

上甲 晃/ 2005年08月25日/ デイリーメッセージ

お盆の休みも終わり、また新しい活動の時を迎えました。諸君もそれぞれにリフレッシュされたことでありましょう。私は、一日は山梨、残りの三日間は、北アルプスの麓にある葛温泉の宿で、ひたすら静養しました。おかげで、今は、体内にエネルギーが少しばかり蓄えられた気がしています。間もなく、今年のサマーセミナー開催です。まだまだ暑い時節ですが、元気一杯、みんなで良い学びの機会として、サマーセミナーを成功させましょう。とりわけ、「東クラス」の諸君には、準備のためにずいぶんご苦労をおかけしています。その労に報いるためにも、みんながお客様意識ではなく、゛主人公意識゛を持って参加されることを期待します。
今年のサマーセミナーのメインテーマが、゛もったいない精神゛であることは、既に十分承知しておいていただいていることと思います。最近、゛「もったいない」の一言は、日本発の流行語として、世界的に注目されています。日本人は、古来、物を大切にする心を、「もったいない」という実につつましく、謙遜な言葉で表していました。しかし、゛もったいない゛の心は、今や日本から消え去りつつあるようにも思えます。水や茶一杯飲むためにも、缶をゴミとして捨てなければなりません。便利を競い合ううちに、゛もったいない゛の心は滅亡の危機に陥ってしまいました。
それは日本だけに留まりません。世界中が、便利を競い合い、゛もったいない゛の心をゴミと共に捨てているのです。二十一世紀、世界は経済発展に今まで以上にのめりこむことでしょう。何よりも、中国、インドという巨大人口を抱える二つの国が、貧困から抜け出て、経済繁栄に爆走することは間違いありません。またそれにひきづられるように、今まで経済発展から取り残されていた多くの国々が、経済発展に目の色を変えることでしょう。地球上に、贅沢な暮らしをする人が飛躍的に増え続けるのが、二十一世紀です。多くの人達が貧困から抜け出ることは、喜ばしいことです。しかし、大きなジレンマもあります。贅沢な暮らしをする人が増えれば増えるほど、エネルギーと資源がたちまち足らなくなるのです。
その悩ましいジレンマを解決するためには、どうしても、゛もったいない゛の心を取り戻さなければなりません。とりわけ日本は、もともと、゛もったいない゛の心の元祖の国です。日本が世界に先駆けて、゛もったいない゛の心を取り戻すことは、今や、地球的な課題でもあります。
今回のサマーセミナーのテーマは、『青年塾』の単なる一回だけの課題ではありません。大げさな言い方をするならば、地球的な課題解決のために立ち上がる、゛歴史的意義のある挑戦゛なのです。私たち百人余が、今回のセミナーを通じて、゛もったいない゛の心を自らの中にしっかりと植えつけて、実践することができれば、既に地球は百人余が実践した分、救われることになります。六十億人もいる地球上の人口のうち、たった百人余が取り組んでも、何の力にもならないと言う人が、世間にはいるかもしれません。しかし、『青年塾』は、「せめて私が」を合言葉にしています。どんなに小さな結果しか生まれないとしても、「せめて私達が」と考えて実践することは、実に誇り高い生き方ではないでしょうか。
私は、゛もったいない゛の心を、今回のサマーセミナーだけのテーマではなく、『青年塾』のすべての研修を貫く一つの精神的支柱として確立したいと願っています。『青年塾』の研修では、机や椅子を並べる時、紐を引いてきちんと並べることはいつでも、どこでもできるようになりました。
次は、゛もったいない゛の心の定着です。少なくとも、研修期間中のゴミの分別は、徹底して実践しましょう。また、使い捨ての物は基本的に使わないことを行動基準として確立しましょう。「ゴミを出さない研修」。もちろん、料理の実習などで、最低限度のゴミは出ます。しかし、それさえ最低限度に抑える努力が求められます。
諸君が、『青年塾』の研修を通じて、「ゴミを出さない生活」を身に付けることができたら。きっと、諸君の周りにいる家族や職場の人達も、諸君の感化を受けて、変化していくことでしょう。そしてふと気が付いたら、思いもかけない大きな広がりを見せていることでしょう。世の中が変わっていくのです。そのためにも、諸君が、最初の一人でなければなりません。
今回のサマーセミナーが、『青年塾』に新しい伝統と風土をはぐくむ第一歩になることを信じると共に、諸君といっしょに、『青年塾』の精神をよりいっそう高めていこうではありませんか。

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