高野さんの志

上甲 晃/ 2006年6月16日/ デイリーメッセージ/

リッツ・カールトン・ホテルについて、日本支社長の高野 登さんは、二時間、熱く語ってくれた。
私は、いきなりから、話に引き付けられた。高野 さんは、まずリッツ・カールトン・ホテルの歴史から話を始めた。「千八百年代の中ごろ、パリのパンドーム広場にホテル・リッツが開業しました。創業者のセ ザールリッツさんは、゛ホテルの非常識゛をいくつも試みました。当時のホテル業界では考えられないような非常識なことを次々に試みたのです。例えば、ホテ ルのロビーに、大きなお花を飾りました。各部屋にシャワーをつけました。お客様の好みに関する顧客情報を記録して管理するようにしました。また、レストラ ンで、自分の好きなものが食べられるようなアラカルトを始めたのも、セザールリッツさんが初めてです。いずれも、今は゛ホテルの常識゛になっていることば かりです。しかし、当時は、ホテル業界の誰もが考えたことのない、゛非常識゛だったのです」。
リッツ・カールトン・ホテルは、セザールリッツさ んの゛非常識への挑戦゛の遺伝子を受け継いでいると、高野さんは、話を切り出した。「リッツとカールトンの二つのホテルが一つになり、一九八三年、ホテル をヨーロッパでなく、アメリカで展開し始めた。ホテルの建設が始まってから、本当に新しいホテルが必要なのか、我々が新しくホテルを作ることにどんな意味 があるのか、そんな議論を徹底して行いました。結論は、ノー。わざわざ我々がホテルを開く意味がないということになりました。そして、我々がやる限りは、 ホテルをもう一つ作るのではなく、社会に゛ラグジュアリー(豪華な豊かさ)゛を創造するところに意味があるとの結論に到達しました。私達が、ホテルのサー ビスやホスピタリティに対する考え方を変えることが出来るかどうか、私達の真価は、そこで問われるのです」。
高野さんの話には、DNA、遺伝子 という言葉がしばしば登場する。企業としての゛遺伝子゛とは、その企業の存在に関する根本的な意義とも言える。リッツ・カールトン・ホテルは、名前はホテ ルではあるが、実際には、「ラグジュアリー(豪華な豊かさ)を新しく創造し、提供する」ところに存在理由を求めているのである。
この点は、まこと に大切なところである。自らの存在の根本理由が明確でないと、サービスの方向も従業員が力を発揮する方向も決まらない。私が高野さんの話に共鳴・共感する 最初のポイントはここにある。企業のDNAとは、私なりの表現では、『志』である。企業に、『志』がなければ、力強い活動など出来るはずがない。