枝豆の誕生

上甲 晃/ 2008年08月19日/ デイリーメッセージ

枝豆が三つ「あっ、枝豆ができている」。そんな孫の驚きの声が、聞こえてきた。私は、すぐさま、孫のそばに走り寄った。二十九本並んでいる大豆の茎の一本に、確かに枝豆が三つ付いている。そっと上から触ってみたが、鞘の中にマメの手ごたえはない。これからが楽しみだ。
私が主宰する『青年塾』の今年の研修課題の一つは、大豆の栽培と加工に取り組むことである。今、全国各地で、八十人以上の塾生諸君が、自宅で大豆を育てている。私も、大豆を栽培することにした。
まず、゛地大豆゛探しから始まった。「そもそも、゛地大豆゛とは何か?」。こんな時、すぐにインターネットに飛びつくのが普通だ。ところが、インターネットで、゛地大豆゛という言葉は検索できないと聞いた。゛インターネット依存症゛にかかってしまっている時代に、インターネットで調べられない課題を決めたのは、大正解だった。インターネットがだめなら、自ら足を運んで、調べて歩くしかない。それが、私の願うところなのだ。
四月、入塾式の時、それぞれの土地に固有の伝統種である゛地大豆゛を全員が持参した。中には、゛地大豆゛と、地納豆とを間違えて持ってきた人もいる。また、ある人は、「絶対に内密」との約束で、農家からもらい受けた人もいた。要するに、゛地大豆゛を探し出すだけでも、みんなは思いのほか、苦労した。『青年塾』では、苦労することこそが、学びの基本と考えている。塾生諸君は、゛地大豆゛を身に染みて、理解したはずだ。
わが家の裏の塀沿い私は、農業関係の会社に勤務する姪に頼んで、゛地大豆゛を確保してもらった。その名を、「さちゆたか」と言う。大阪府茨木産だ。六月中旬に撒くようにと教えられたので、六月十五日きっかりに、三粒づつ、三十センチ間隔で撒いた。場所は、わが家の裏の塀沿い。斜面になっているので、日当たりは申し分ない。それなりに、畑らしく一畝を耕した。やがて、芽を出し、花が咲き、枝豆が付いた。来週から始まるサマーセミナーには、「枝豆持参」との宿題が出ている。はたして間に合うか。
農業を営む塾生から、「あなたの゛自分自給率゛はどれくらいですか?」と聞かれた時は、ショックだった。日本の食糧自給率がカロリーベースで四十パーセントを切っていることは、国として大問題だと指摘してきた私ではあるが、自身の食料自給率はゼロだった。食糧難に陥れば、最初に飢饉に見舞われる組だ。これからは、゛マネー゛より、゛命゛の時代だ。
どれほどお金を儲けても、食べる物がなければ生きられない時代を迎えている。゛自給自足゛こそ、時代のキーワードになってきた。
※このデイリーメッセージは「アイビーエム・ユーザー研究会」ホームページにも掲載しています。
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