帆立貝と秋異変

上甲 晃/ 2008年10月17日/ デイリーメッセージ/

舟木耕一さん「いつもの年であれば、この時期、作業をしている手が寒さにかじかむのですが、今年は、そんなことはまったくありません。それどころか、汗ばんでくる。とにかくこんな暖かい秋は、珍しい」と話し始めたのは、サロマ湖で、三十年にわたって帆立貝の養殖をしている舟木耕一さんである。

大阪の自宅を出る時、私達夫婦は、覚悟を決め、冬支度をした。オホーツク海に面した北の地は、最早、冬の入り口にあるのではないかと予想したからだ。ところが、連日の快晴、日中の温度は二十度を超えている。「今年、紅葉の色付きが悪いのは、朝夕の温度が下がらないから」と、地元の人達は、一様に口を揃える。北の国は、゛秋異変゛なのだ。

「海の様子もおかしい」と舟木さんは、言う。例えば、サロマ湖の外、オホーツクの海で、つい最近、本マグロが定置網に掛かった。「本マグロが網に掛かるなんてことは、ついぞなかったことです」と舟木さんも驚いている。どうやら、水温が変化しているために、漁業事情にも異常現象が現れているのだ。本マグロが網に掛かる一方では、本来この時期に獲れなければならないはずの秋鮭が網に掛からない。「水温が高いために、鮭が川に近付かないのではないだろうか」と、地元の漁業関係者は推測するが、詳しいことはまだ分かっていない。

「そう言えば、昨年の秋、帆立貝の成長がぴたっと止まってしまったことがあります。原因は分かりません。とにかくおかしいおかしいと、みんな、首をひねるばかりでした」と、船木さんは、自らの経験を教えてくれた。オホーツクの海に何らかの変化が起きていることは、事実だ。かつて、寒冷地の北海道で取れる米は、あまりおいしくないと言われていた時期がある。それが、最近は、気温の上昇につれて、おいしい米どころ゛になってきている。陸の変化と同様、海もまた変化しているのだ。

舟木さんの船に乗って舟木さんの船に乗って、サロマ湖の帆立貝の養殖場を見せてもらった。「海の異変も不大変だが、円高も痛い」と言う。帆立貝と円高が関係すると知り、思わず、「どうして?」と質問した。「帆立貝は、八割が輸出です。だから、円高になると、もろに影響を受けるのです」とのこと。最近、中国でも、帆立貝の養殖が盛んになり始めている。激しい競争下にあって、円高なると、国際競争に勝てないのだ。自然環境の異変、経済環境の異変に、帆立貝も翻弄されているのである。

今年、日本列島への台風の襲来が少なかった。サロマ湖は、海につながっている。「海の掃除という観点から見ると、海がシケないのは、水質面から問題が多い」と舟木さん。゛帆立貝事情゛も、容易ではない。