宝貴的資源

上甲 晃/ 2009年1月5日/ デイリーメッセージ/

シンガポールマレー半島の先端に位置するシンガポールは、隣国マレーシアと、水道を挟んでつながっている。国境には、両国を結ぶ三本のパイプがある。三本のパイプは、シンガポールに住む四百五十万人にとっては、生命線である。パイプが破壊されれば、シンガポールは、たちまち干上がる。
三本のパイプのうち、二本は、マレーシアから生水を輸入するものである。生水は、そのままでは飲料水としては使えない。そこで、技術的にも資金的にも優位にあるシンガポールが、生水を浄化して、残りの一本のパイプを使って、逆に、マレーシアに輸出している。

国の面積が淡路島と同じ面積のシンガポールには、高い山はない。一番高い山でも、海抜百四十メートル。新しく完成したシンガポール第一の高さを誇るビルは、その倍、二百八十メートルある。高い山がなく、国土が狭いことは、水不足をもたらす。人間、油がなくても生きていけるが、水がなければ生きていけない。自国で国民が使用する水を自給できないことは、シンガポールにとって最大のアキレス腱でもあるのだ。

一九六五年、シンガポールがマレーシアから独立する際、水を売ってもらう契約を結んだ。三本のパイプが建設されたのも、その後だ。契約は、二〇一一年と二〇六一年に更新の時期を迎える。仮に、将来、両国の関係がこじれたら、価格を今よりはるかに高く売りつけられるかもしれない。あるいは、売ってもらえないことさえ、あり得ない話ではない。シンガポールは、今、水を自前で確保することに躍起となっている。

私は、正月早々にシンガポールを訪問、「水を自給するプロジェクト」を見学して回った。水を自給するプロジェクトは、大きく三つある。まず、下水を上水化すること、海水を淡水化すること、そして溜池方式だ。

シンガポール2最初に見学したのは、下水の上水化の拠点だ。国内四ヶ所の拠点で、下水を回収して、最新鋭の工場で、高精度の処理をし、完全なる上水、名付けて、゛ニューウォーター(新生水)゛を生産している。現在、九十八パーセントが、工業用水として再利用され、飲料用は二パーセントだ。将来はこれを拡大して、水利用全体の三十パーセントにまでしたいと、担当者は意気込んでいた。下水と聞くと、心理的に抵抗があるものの、データー的には完璧な蒸留水だ。政府は、国民が進んで゛新生水゛を飲むことを奨励している。若い人達は、既に、慣れつつある。
シンガポールは、水を「宝貴的資源」と呼ぶ。日本には、シンガポールの人から見たら、喉から手が出るほど欲しい水が、あり余るほどある。あり過ぎて、ありがたみが分からないことが、いささか残念である。