ザルツブルグコース

上甲 晃/ 2009年06月20日/ デイリーメッセージ

益田ドライビングスクールは、益田のM、ドライビングのD、そしてスクールのSの頭文字をとって、゛MDS゛と称していた。ところが今回出かけてみて、゛MDS゛の意味が変わっていることに気がついた。Mは、マインド、即ち心。Dは、デザイン。Sは、スクールになっている。「心をデザインする学校」というわけだ。そこには、会長である小河さんの、熱い思いが込められている。「左脳は、損か得かの計算ができる能力。24時間、損得ばかり考えるのを止めて、右脳を働かせよう」と小河さんは、MDSの持つ意味を変えた思いを語る。車の運転は技術。技術だけをどんなに習得しても、運転する人の心が成長しないと、本当に安全な運転はできないと、小河さんは考えている。
MDSと名称の中身を変更した一つの典型的な実例がある。益田ドライビングスクール全体を見渡すことのできる丘の一角に、新しいコースが完成した。そのコースの名前を、゛ザルツブルグコース゛と呼ぶ。モーツアルトの生誕地であるザルツブルグの森をイメージして名付けられた。そのコース作りをしたのは、モーツアルト部である。やがて何年か経てば、木々か育ち、深い森の中を走るコースになっていく予定である。
そもそも、自動車教習所のコースは、警察の指導の下、すべてが数ミリ単位にまで管理されている。「森の中の見通しが悪いコース」など、認められるはずがない。しかし、小河さんは、「反骨精神と自主独立の気構えがなければ、本物は生まれない」と、押し切ってしまった。「滝や橋まで作りました」と、モーツアルト部の責任者は笑う。運転技術の習得だけが、自動車学校の仕事ではない。運転する人の心のデザインまでやるのだと、関係者はおおいに張り切る。
近くには、レンガで作った迷路が完成した。迷路は、瞑想の道でもある。「人間、とどのつまり、行き着く先は自分である。すべては、自分のせいだ。瞑想は、その自分と向き合うこと。瞑想すれば、人は、右脳を働かせるようになる」と語る小河さんの口調は熱い。それにしても、゛ザルツブルグコースト゛といい、゛瞑想路゛といい、MDSの名称変更の実例は、まことにユニークだ。
「不況は深刻である。しかし、嘆いたところで、どうにもならない。不況を味方につけること。考えてみたら、゛これぐらいはいいだろう゛と手抜きしてきたツケが、どっと出たのだから、治療方法は簡単。やるべきことをやってこなかったのだから、やるべきことをきちんとやればいい。それには、損得ばかりではなく、精神性、心、愛情を注ぎ込むことだ」。明快。

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