労働組合の未来

上甲 晃/ 2000年12月4日/ デイリーメッセージ/

全国の労働組合が大同団結して設立された「連合」が、10周年を迎えている。10年の節目を祝い、連合の福岡地協が記念の講演会とパーテイなどを開催した。私は、記念講演の講師として招かれた。

私もかつて、松下電器労働組合本社支部で、情宣部長、そして書記長の二役を経験したことがある。私が組合活動をしていた時代、組合の役割はきわめて明確であった。「賃上げ」、組合員の関心は、この一点に絞られていた。高度成長する会社。それにふさわしい絵料を求める組合員。その駆け引き、交渉は、まことにダイナミックであり、躍動的であった。

「もっと給料を上げてほしい」、そんな組合員の熱い思いを受けて、組合の幹部はがんばったものだ。当時は、賃上げ率も篤くほど高かった。今でもはっきり覚えているが、33.99%などといった賃上げの回答を受け取ったこともある。また、年末のボーナス闘争で、3.4カ月の満願回答が出て、「要求が低すぎた」と組合員に突き上げられたこともある。

そして、組合員もそこそこに豊かになるにつれて、賃上げが、かつてほど組合員の中心的な関心でなくなってきた。また、時代も、かつてのような高度成長期とは異なり、成熟期に入り、賃上げ率もきわめて低いところで推移するようになった。組合活動に対する合意が、拡散し始めたのである。「何のための組合」、そんなもっとも基本的なところで、組合の役員や組合員の合意が成り立ちにくくなってきたのである。

組合は統一して、「連合」という組織にまとまったけれども、組合のはたすべき役割 の認識は、逆に、ばらばらになってしまったのである。若い組合員は、労働組合という言葉さえ、異和感をもって受けとめていると聞く。できれば、組合費を返してほしいし、組合活動からも逃れたいと思う人が増えている。まさに、労働組合も、21世紀を直前にして、重大な岐路に立っているのである。存亡の危機などと表現すると、組合の幹部からは叱られそうだが、私にはそのように思われてならない。

それでは組合は、もう不必要だろうか。私は、そう思わない。例えば、貸金こそいささか高くなったけれども、組合員の置かれている労働情況は決して良くなっていない。とくに精神的な面では、普以上に深刻な問題が多い。中高年の組合員の抱える問題は、深刻だ。また、会社が正しく発展するための目付け役としての役割も大きい。あまりにも多くの会社が反社会的な行為を平然として行なっている。いったい、組合は何をしているのか、そんな疑問もある。労働組合よ、しっかりしてくれ。労働組合の正しい発展は、健全な社会づくりのためにも不可欠である。