新旧のせめぎあい

上甲 晃/ 2000年11月13日/ デイリーメッセージ

今日の経済環境をどのように捉えるか、企業によって、明暗が分かれているように思われる。概して混迷しているのは、過去の成功者。それに対して元気なのは、最近創業した人たちである。過去の成功者たちは、「今までのようにいかない」と嘆く。一方、最近創業した人たちは、「実にやりやすい時代になった」と、ほくそえんでいる。

そのことを具体的に教えてくれた人がいた。愛知県半田市で運送業を営む榊原さんがその人である。「私のところのような新参者の企業にもようやくチャンスが巡ってきました。たいていの大手企業では、今まで出入りの運送屋さんが決まっていました。その壁は厚くて、とても私のような新参者を受け付けてくれませんでした。ところが、最近、大手企業がきびしい競争に勝ち抜くために、今までの取引関係を白紙にして、私どもにも競争に参加のチャンスをいただけるようになりました」、それが榊原さんの話の骨子である。

要するに、過去に実績があった会社が、既得権益を失い、実績のなかった会社に新規挑戦のチャンスがめぐってきたというわけだ。同様の変化がすべての業界で、同時進行しているのが、今日の日本である。これは、経済界だけの変化ではない。政治の世界でも同じようなことが起きていることは、最近の選挙結果にも明らかだ。

時代の変わるときは、常に新旧のせめぎあいから始まる。そして、「古来、攻撃は最大の防御」。新規に挑む側が有利である。追いかけられる方がたじたじとする。榊原さんのもうひとつの言葉がそれを教えてくれる。「新しく競争に参加させてもらったら誰でも張り切ります。今まで、参加が許されなかった悔しさがばねになり、全力を出しますから、既得利益にあぐらをかいてきた会社はたじたじです」。

今、日本で一番遅れている業界は、規制により手厚く保護されてきたところだ。高い壁に囲まれてぬくぬく過ごしてきた業界は、壁を守ることに必死である。しかし、それは時間の問題。早晩、壁は崩れ去り、激しい競争にさらされることは間違いない。

このような時代には、「挑戦」がキーワードだ。守勢に入ると、守りきれないだろう。とりわけ過去に実績のある会社ほど、自己革新が図れるかどうかを厳しく問われところである。また、志のある者は、今こそ立ちあがるべき大チャンスを手にしている。失敗を恐れてはいけない。果敢な挑戦こそが、道を開いてくれるのだ。これから10年もすれば、時代の流れは、ひとつの方向に向くだろう。それからでは遅い。

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